佐藤尚之著、「明日の広告」読みました。
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) (アスキー新書 45)
2008年1月発行なので、出たばっかりです。
読んで良かった。もしこの本と出会えてなかったら大変な時間の無駄、回り道をしたところでした。時間でいえば1年、貨幣でいえば1000万くらいの価値ありました。¥743なので1万倍以上の投資効果です。200ページ強のボリュームなのでさくっと読めます。導入部はこんな感じ
インターネットの普及、情報洪水、市場の成熟などによって、消費者はガラリと変わってしまった。
マスメディアへの接触が減り、広告をスルーし、しかも信じない。友人からのクチコミの方がずっと信頼される。いったいこれからどうすればいいのだろう……。
先行きの不安や閉塞感を持っている人も多い広告業界。でも不安に陥ることも悲観することもない。
ちょっと発想を転換してコミュニケーションの仕方を変えれば、広告にもメディアにも、きっと明るい「明日」が待っている。
と書いてあります。想定読者は
「最近ちょっと広告が小難しくなってきた」とお嘆きの方、
これからの広告コミュニケーションに興味がある方、
「本当にテレビCMって崩壊するの?」と不安に思っている方、
何となく閉塞感を持っている広告業界若手の方、
広告業界をめざしている学生の方……
だそうですが、アフィリエイトとかしているブロガーやネットショップオーナーなどまで読者対象になるかと思います。
キーワードとしてはコミュニケーションデザイン、クロスメディア、(ネットの出現で)広告がどう変わったか、(ネットの出現で)消費者がどう変わったか、です。
正直この本のこと書くの迷います。自分のまわりの人には読んで欲しくないんですよね・・・私がもやもやしてた部分の答えがそのものずばり書いてあったりして、同じ認識を持って欲しくないんです。そのくらい自分にはインパクトがあったし、この著者ここまで書いて大丈夫なんだろうか、と心配になったくらいです。
もちろん肝心の消費者行動分析の部分の手法は一切書いていないのですけど。
でもここまで書いてもらえば十分です。
にしても地方の広告代理店は読んで欲しくないなぁ。だって私が出し抜きたいんですもん。今のメディア前提のお抱え代理店がこの考え方をゆがめてクライアントに押しつけ始めたらちょっとタチが悪くなる可能性があるんじゃないかなと。個々の人は優秀でも組織ってのはそういうもんですから。
目次載せておきます
- はじめに 〜「なんだか小難しい時代になっちゃったな」とお嘆きの貴兄に
第1章 消費者へのラブレターの渡し方 〜広告という名の「口説き」の構造
- 広告は消費者へのラブレター
- ラブレターを普通に受け取ってくれていた時代は楽だった
- いまやラブレターを受け取ってさえくれない
- モテない人はどうやってラブレターを渡せばいいか
- もっと相手をよく知り、しっかり手渡しする
- ラブレターは渡した後も大事
- 購入後にこそ、ブランド・イメージが出来る
- 軽いつきあいと重いつきあい
- 自己変革でモテをめざす
- ラブレター職人で本当に満足してる?
第2章 広告はこんなにモテなくなった 〜変化した消費者と広告の20年
- 広告がモテていた古き良き時代
- CMという「部品」への疑問
- インターネットの出現
- 消費者の逆襲としてのインターネット
- ヨコでつながり、ボトムアップする
- ネットとは、商品の真の姿を映しだす「ラーの鏡」
- ネットの出現+情報洪水+成熟市場
- 疑い深い消費者の登場
- もう消費者はお茶の間にじっとしていない
- 「友達・好きな人・信頼できる人」という強力メディア
- 消費者の発信が世の中を変えはじめた
- 広告は素人投稿ビデオに勝てるか
- 受け手から送り手へ。ターゲットからパートナーへ
- 消費者は変わった。広告も変わらないと!
第3章 変化した消費者を待ち伏せる7つの方法 〜彼らと偶然を装って出会うために
- 気まぐれにメディアを渡り歩く消費者をどこで待ち伏せるか
- (1)消費者のコンタクト・ポイントで待ち伏せる
- (2)新しいメディアを創って待ち伏せる
- (3)クチコミを利用して待ち伏せる
- (4)CGMで待ち伏せる
- (5)エンターテイメントの中で待ち伏せる
- (6)検索結果で待ち伏せる
- (7)メディアをニュートラルに考えてクロスに待ち伏せる
- これらすべてを使ってコミュニケーション・デザインする
第4章 消費者をもっともっとよく見る 〜コミュニケーション・デザインの初動
- その人のことをきちんと知ろうと目を凝らし、耳をすます
- 消費者本位という視点
- 「伝えてもらいたがっている人」のことをリアルに想像する
- あるクルマの話
- 初動で徹底的に消費者を分析すること
- F1M1なんていう消費者はいない
- 高校生=モバイル?
- 買いたい人を作り出してしまう
第5章 とことん消費者本位に考える 〜スラムダンク一億冊感謝キャンペーンより
- スラムダンク一億冊感謝キャンペーン
- それはこんなオリエンから始まった
- 星野仙一「阪神優勝感謝広告」との違い
- 「ありがとう」を伝える相手に目を凝らし、耳を澄ます
- もうスラムダンクは井上さんのものではなく、彼らのものだ
- キャンペーンは自然とメディア・ニュートラルになっていた
- めちゃめちゃ閉じた新聞広告
- めちゃめちゃ不親切なウェブサイト
- めちゃめちゃ限定して告知したイベント
- 伝えたい相手をとことん理解した少人数が最後までやる
- 「広く伝えること」と「深く伝えること」
- このキャンペーンから学んだこと
第6章 クリエイティブの重要性 〜商品丸裸時代とネオ茶の間の出現
- それは広告ではなく、インフォメーション
- 圧倒的に不利な二番手が一番手を引っ繰り返す
- クレバーな仕組みの上にフールなクリエイティブを載せる
- クリエイティブ・ジャンプの余地を残してデザインする
- 商品丸裸時代にイメージ広告は通じにくくなる
- 商品丸裸時代のクリエイティブ
- コミュニケーション・デザインは、既存マスメディアをもう一度魅力的にする
- ネットも動画の時代に入り、テレビのチカラは再認識される
- お茶の間が消滅し、テレビのチカラが弱まった
- ネオ茶の間により、テレビはまた人気者になる
- ネオ茶の間では、CMもそんなにスキップされなくなる
- ネオ茶の間は、超実力主義
第7章 すべては消費者のために 〜消費者本位なチームづくり
- で、ど、どうすれば…?
- ある営業さんの一枚のシート
- 仕事の進み方は「消費者の変化」に合わせて変化する
- 消費者本位に考えてチーム編成する
- コミュニケーション・デザイナーを選ぶ方法
- どんどん領域侵犯しよう
- より長期的に消費者とつきあっていく
- 大切なことは「消費者本位」ただひとつ
- 企業のソリューションから消費者のソリューションへ
- おしまいに 〜楽しくエキサイティングな時代なのだ